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インド・ニューデリーのジャワーハルラール・ネルー大にて国際関係を学んでいた留学生の記録。
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昨日1月8日(木)は祝日。ムハッラム(Muharram)。イスラーム教由来の祝日らしい。

先週末から持ち越しとなっていた短い論文を、昨夜から今朝にかけて集中的に取り組んで、ようやく終わらせた。毎度のことながら、締切間際にならないと書き進められない。最終的にはいつもちゃんと間に合うのだが、無理やり間に合わせるために仕事の質が落ちるということが起こりうる。今回はまさにそのような例になってしまった。

以下は1月7日午前の研究会メモ。グローバリゼーション研究に関するもの。


2009年1月7日
報告者:Meenal Shrivastava(Athabasca University, Canada)
テーマ:Globalization Studies: Pushing the Boundries of 'Global Paradigm'

前日と同じくCIPOD主催のセミナー。海外で活躍しているJNU卒業生による報告という点も昨日と同じ。今回の報告者は、カナダで教鞭をとっているグローバリゼーション研究者。基盤とする学問分野は政治経済学(Political Economy)。最近の業績には、Meenal Shrivastava, "Globalizing 'Global Studies': Vehicle for Disciplinary and Regional Bridges?" New Global Studies, vol. 2, no. 3, 2008がある。

大筋としては、現在の北米における「グローバル研究(Global Studies)」のあり方に疑問を投げかけ、大学における「グローバル研究」教育のより良きスタイルを模索する報告であった。

報告者は、既存のグローバリゼーション研究における様々なバイアス(biases、偏見)を指摘する。立脚する学問分野によるバイアス、地域的バイアス、歴史的バイアスなど。報告者自身に政治経済学というバイアスがあることも認めていた。グローバリゼーション研究は記述(description)・説明(explanation)における価値よりも、言説それ自体のインパクト、つまりはイデオロギー的意味合いの方が強いとの見解であった。

報告者はインドのジャイプルに生まれ育ち、南アフリカで研究者生活をスタートさせ、現在は1年の半分を雪に覆われるカナダの都市で教鞭をとっているという、まさにグローバリゼーションを体現する人物であるが、アフリカへの関心の高さがうかがえた。既存の研究においてアフリカは歴史的に疎外された地域、あるいは歴史の変化の対象(recipient of changes)としての描かれ方をされてきたが、近年のアプローチである「地球史(Global History)」研究においては従来と違う新たな捉え方がされはじめていることを評価していた(例:Erik Gilbert and Jonathan T. Reynolds, Africa in World History: From Prehistory to the Present, Prentice Hall Colledge, 2003)。アフリカの例が示すように、既存の研究枠組みは西洋にバイアスされた限られた経験に基づくものであるので、真にグローバルなアプローチによって既存の分析視角を拡大し、グローバルな構造を特定することがグローバリゼーション研究の課題であるという結論であった。

感想としては、正直なところ、「今さら」感が強い。グローバリゼーション研究に触れる機会は少なからずあり、とくにヨーロッパに根強い批判的スタンスのグローバリゼーション研究を見てきた立場からすると、今回の報告に新しさは感じられない。先行研究の批判的リビューという色合いの強い報告であったが、その対象として考察されているグローバリゼーション研究が、報告者の専攻分野の関係もあってか、経済的アプローチからの研究に偏っているように思われた。

同日午後にもグローバリゼーション研究関連の研究会があったが、授業登録手続きのために出られなかった。セミナー・ルームに人が入りきれない程に盛況であった(午前の部も全席が埋まっていたが、それ以上に)。この手の研究会にこれほどの人が集まることは多くない。JNUでもグローバリゼーション研究への関心が高まっているのだろうか。あるいは、まだ授業が始まっていない時期であるので、学生に時間の余裕があるためかもしれない。
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toshi
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男性
自己紹介:
2008年7月から2010年5月まで、ジャワ―ハルラール・ネルー大学留学。
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