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インド・ニューデリーのジャワーハルラール・ネルー大にて国際関係を学んでいた留学生の記録。
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wikipedia上のとある日本人研究者の経歴に、「国際インド学校留学」との一文を発見した。なるほど、こういう訳し方もあるのか、と思った(必ずしも肯定的な意味ではなく)。

この「国際インド学校」とは、現在自分の所属するセンター(国際政治・国際組織・軍縮センター、Centre for International Politics, Organization and Disarmament: CIPOD)のルーツにあたるIndian School of International Studies(ISIS)のことだと思われる。その研究者がそこに所属していたという話は聞いたことがあるので(JNUの元教授から)、まず間違いない。

今でこそCIPODはJNUという大学院大学(学部組織も一部存在するが、基本的には大学院のみ)における、国際研究科内の一組織であるが、ISISはJNUよりも長い歴史を持つ。ISISの設立は1955年。JNUオフィシャル・ウェブ・サイトによると、ISISは大衆教育の機関としてではなく、独立間もないインドの国家運営を担うエリートの育成を目的として設立されたことがうかがえる。1970年に新設のJNUに併合されてその中の一研究科(国際学研究科、School of International Studies: SIS)となるまでは、Ph. D.課程のみしか提供していなかった。その後、SISにはM. Phil.やM. A.課程も設立され、大学院の一研究科として体裁を整えることとなった。

ISISを直接的に受け継いでいるのはSIS(国際学研究科)だが、内容的にはSISの内部の部門であるCIPODがISISの役割を色濃く受け継いでいる。インドの戦略コミュニティにはCIPOD出身者が非常に多いと言われる(ただし自分の実感としてはそれほどでもない。むしろSIS内の地域研究部門出身者のプレゼンスを感じる)。CIPODに限らないが、マルクス主義の存在感は全くと言っていいほど感じられず、リアリズム(一般的な意味でも、理論的な意味でも)が圧倒的な優位を誇る。

これら(戦略コミュニティとの近さ、現実主義志向の強さ)は伝統的かつ現在も根強いトレンドと言えよう。それとは異なるところで、古い流行の廃れと新たな動きがあるように思える。「第三世界」(この言葉の有意性にはまったく否定的な立場だが)からの抵抗という視点は、インドの台頭という(少なくともある側面での)現実を反映してか、薄れつつある。年配の教授陣には、世代的な呪縛としてそのような傾向がある(大概自認しており、しばしば自己批判もする)。対して(補完的という意味ではない)、新しい流れとしては、学究志向、理論化志向の動きがある。既存の理論や枠組みを使って分析するだけではなく、新しい理論を生み出す、ないしは既存の理論に修正を加えていこうとする試みである。必然的に、欧米において展開されてきた既存の議論に関心が向きがちとなる。

複数の視点が相乗効果をもたらすことがもちろん望ましいのだが、現実には逆に溝となっているような気がしないでもない。
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toshi
性別:
男性
自己紹介:
2008年7月から2010年5月まで、ジャワ―ハルラール・ネルー大学留学。
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