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インド・ニューデリーのジャワーハルラール・ネルー大にて国際関係を学んでいた留学生の記録。
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1年半に及ぶインド生活、何らかのトラブルに見舞われるであろうことを予測していなかったではない。幸いにしてこれまでは深刻なトラブルとは無縁であったが、ついに一昨日、重大なトラブルに見舞われた。それも、インドとはあまり関係のないトラブルに。

この日は友人とニューデリーおよびオールドデリーを訪れる予定になっていた。まずタクシーを調達すべく、1人でJNU正門前のタクシー会社に向かった。

駐車場を歩いているときのことだった。足場が斜めになっているところで足を滑らせた。バランスを崩し、転倒。右足つま先に全体重かかり、不自然に折れ曲がった。

その折れ曲がり方に、ヤバイ、と思った。骨が折れたか?右足甲が痛む。とりあえず足の指は動くし、痛みもそれほどではないが、ただでは済まないだろうと思った。骨折経験もないので、痛みからの判断はできなかった。良くて捻挫、最悪複雑骨折。とにかく病院に行かねばなるまい。

そのままタクシーに乗り、まず友人と合流。事情を告げ、病院に付き添ってもらうことに。

訪れたのは、ロックランド病院(Rockland Hospital)。その友人が利用したことがあり、自分も付き添いで行ったことがあった。JNU内のヘルス・センター以外にはここしか知らなかったので、迷わずここを選んだ。

Rockland Hospital
B-33-34, Qutab Institutional Area, New Delhi 110016
http://rocklandhospital.net/

デリー有数の立派な病院。相対的にコストは高いが、その分設備は充実しており、さほど混雑もしていない。

入り口で車椅子に乗せられて、応急室(Emergency)へ。しかし、ここからが長かった。まあ、日本でも病院とはそういうところか。違いは、いちいち先に支払いをする必要があることだ。

(1)応急処置。ただし、症状と名前・年齢を聞き、血圧をチェックしただけ。

(2)登録用紙に名前などを記入し受付へ。登録料(Rs. 50)と診察料(Rs. 300)の支払い。

(3)診察。医師は英語堪能。とりあえずレントゲン検査を受けるよう指示を受ける。

(4)レントゲン検査料の支払い(Rs. 200)。

(5)レントゲン撮影。

(6)診察。骨折。足の甲の骨が、1本は完全に折れ(砕け?)、他2本もヒビが入っている。6週間の患部固定を要するとのこと。レントゲン写真を見るなり、同行の友人が驚きの声を上げていた。自分の澄ました様子からして、これほど重症だとは思っていなかったそうだ。

(7)ギプス処置の資材代金(Rs. 1,184)と処置料(Rs. 500)の支払い。

(8)処置。石膏で固める。

(9)薬(痛み止め)の購入(Rs. 58)。

以上。

(2)から(9)までがすべて同じフロアであったのは幸いだが、付き添いなしではなかなか大変だろう。

診察の医師からは6週間の車椅子生活を言い渡されたが、この街で車椅子生活を送る困難は容易に想像ができた。常時の介助なしでは無理だ。

幸いにして片足は無事なので、松葉杖を使うことにした。だが、病院内の薬局には売っていなかった。受付で聞いたところ、AIIMSの近くで買える、との情報を得た。AIIMSというのは、All India Institute of Medical Sciencesという公立病院のこと。インドNo. 1の病院として非常に有名。2009年1月にマンモーハン・シン首相が心臓バイパス手術を受けたのもこの病院だ。周囲には薬局が乱立している。確かにそこならありそうだ。

待たせておいたタクシーに乗り込み、AIIMS方面へ。薬局が立ち並ぶのは、デリーを南北に貫く所要街道オーロビンド通り(Aurobindo Marg)。友人に購入してきてもらった(Rs. 900)。

近くのマーケット(Green Park)でランチと買い物。さっそく松葉杖を使って歩き出す。初めてのことで、ぎこちない。杖の持ち方は?どうやって階段を昇り降りは?よくわからないが、何となくで実践。しかしさっそく階段でこけた。きっと日本の病院で治療を受けていれば、松葉杖の使い方とかを教えてくれるのだろうけど、今回そういう流れにはならなかった。

ランチと当面の買出しを済ませたあとは、当初の予定をすべてキャンセルし、そのまま寮に帰った。部屋が地上階なので、部屋にたどり着くのは容易だった。地上階でなかったら、大変な苦労だ。

部屋に戻り、まずは履いていたデニムにハサミを入れて切り裂く。捲し上げた状態でギプスを固めてしまったため、破かない限りは脱げなくなっていた。留学生活の思い出がつまったデニムだが、やむを得ない。代わりに室内着のジャージを履く。しかしこれで外出はしたくない(見た目の問題もあるが、何よりも寒い)。ふと、留学1年目に愛用していたデニムを思い出した。留学スタート時は今より10kg以上体重が重かったので、当時のデニムは太い。もしかしたら、と思って試したところ、ギプスを通過させることができた。これなら履ける。

1人になって気付かされたのは、想像を絶する不自由さ。最大の問題は、両腕で松葉杖を使うため、モノを持てないことだ。水を汲んでくるという単純作業すら困難だ。

デリーでは、困難に直面した人がいるとき、周囲の人たちは非常に親切だ。とくにJNU内ではなおさらだ。だからちょっとしたことをお願いして、断られるor無視されるという可能性はほぼゼロだ。この点はおそらく東京より優れている。バリアフリーという観点では東京と比べものにならないほど遅れたこの土地だが、それでも身体的障碍をもった多くの人が生活できているのは、そのような周囲のサポートがあるからだろう。

周囲の助けを得れば、何とかやっていける。周囲の友人たちは、こちらが頼めば間違いなく助けてくれる。だが、自分のメンタリティーとして、助けを差し出すことは構わないが、助けを受けるのは忍びない。

諸事情を勘案して、一旦帰国することにした。微妙な判断だ。一時撤退で体制を立て直す、という意図はない。むしろ、生活面での障害の少ない実家で過ごすことにより、研究に振り向ける時間を確保することが狙いだ。

困難と課題を抱え、留学生活は最後の3ヶ月にさしかかる。まさに正念場だ。追い込まれないと頑張れない性格なので、これでようやく舞台は整った、と前向きに考えておこう。
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プロフィール
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toshi
性別:
男性
自己紹介:
2008年7月から2010年5月まで、ジャワ―ハルラール・ネルー大学留学。
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